手を降ってくれたおじいちゃん

介護のお仕事エピソード

私の働く施設に、1ヶ月ほど前に来たおじいちゃん。

たくさん既往症があり、来たときは目も開けず、何を聞いても
「うん…」

歩けず、立てず、食べられず…
担当を持つことになり課題が多く、頭がパンパンだった。


でも、おじいちゃんの成長は素晴らしかった。

数日経つ頃には、廊下を歩き回り、床の傷を拾おうと四つん這いになった。

テーブルの上にも乗った。ご飯を自分で食べる日もあった。

「こんなに動けるんだ!」
と嬉しい反面、
「これでは他の方のケアが出来ない…」


多分来る前まで飲んで溜まってた薬が切れてきたんだろう。

動きすぎちゃうけど、自分で止められず機嫌が悪くなり、私達を叩く・蹴る。

そんなおじいちゃんに合う薬を試していく。

次第にまた薬が体に溜まっていくのか、出来ていたことが出来なくなってしまったこともある。

認知症があることで、意思の疎通が難しいかったけど、

別の施設に移るとき、別れ際に手を上げてくれた。

多分、手を振ってくれたんだと思う。

「目を開けてね」、「手すりを持ってね」、「座りますよ」…

お願いしても出来なかったのに、
「別れ」はわかるんだ。

心で何か感じたのかな。

感動でもない、驚きでもない。
別れる事の寂しさで泣きそうなった。


おじいちゃん、別れる事ちゃんとわかってたんだ。

寂しさを堪え、フロアに戻る。

洗濯入れのバケツを忘れていることに気づき、愕然とする。


報告書を書き、上司や相談員に謝り、また泣きたい気持ちになった。 

新しいところでは、目を開けてご飯食べてよ、おじいちゃん。

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