頑固者と嫌われていたNさん

Nさんは、・脳梗塞で軽度の右麻痺

     ・脳腫瘍摘出手術

     の既往を持つ88歳の男性。

デイサービスを利用しながら自宅で奥さんと暮らしており

1か月に1,2回ショートステイを利用されている。

以前まで、Nさんは毎回ショートステイに来るのが嫌だったらしい。

「自分はここに居る人たちとは違う」

「食堂に行き、一緒に他の人と食事をとりたくない」

はっきり「嫌だ」と声に出すほど、ショートステイ中部屋からほとんど出てこなかったらしい。

建物の老朽化によって移転した私の職場は新築となった。

それまで1フロア30人以上の4人部屋だった旧施設から、1人1人個室の部屋になり、ショートステイ専用のユニットできた。

新しくなった特養に、Nさんが訪れる日。職員の身も引き締まる。

新入職員として他部署から異動した私。

噂を聞き、どれだけ頑固で気難しい人なのだろうと勝手にドキドキしていた。

部屋に案内し、食事は相変わらずリビングには来なかった。

「あまり関わられるのが好きじゃないのか?」

距離の詰め方がわからなかった。

食事を配膳しに行ったとき、持参のDVDプレーヤーでクラシックを聴いていたため、私も音楽が好きである事を話した。

62歳からピアノを習い始めたこと、ジャズが好きでよくライブに行ったこと、

家にグランドピアノがあったこと・・・

たくさん自身の事を話してくれた。

少しずつ話が膨らみ、もっとNさんの事を知りたいと思うようになった。

会う前に聞いていた【頑固で気難しい人】って、どういうところだったんだろう。

先入観でガチガチに決めつけていただけだったのかもと反省した。

特養には色々な人がいて、体が不自由な人、認知症の人、大きな声が出てしまう人・・・

話し相手がいなかったり、夜も何かしら声や音がしたり、

Nさんにとって苦痛に感じることがいくつかあっただろうに、

Nさんに寄り添う時間が取れなかっただけなのかと思った。

いつの間にか、

「時間ができたら部屋にきてください」と、お喋りに誘ってくれるようになった。

笑顔もたくさん見せてくれる。

自身のおすすめの本を貸してくれ、お礼に私も数少ない自分のおすすめの本を貸した。

知ろうとすること、すごく大事な事を気づかせてくれた。

知ろうともせずに構えてしまった事、噂だけでこんな人だろうと決めつけていた事

大変失礼いたしました。

Nさん 次回の利用も心からお待ちしています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました